テレビドラマや映画で描かれる架空の江戸時代――夜でも
部屋はライトで明るく照らされ、既婚女性はお歯黒をつけず、
飢饉や伝染病の脅威など存在せず、正義のサムライが悪人を
ばったばったと斬り倒す――を、本物の過去と錯覚しているのだ。
仮面ライダーの実在を信じる特撮マニア、ガンダムの実在を信じる
アニメ・マニアはいない。
だが、テレビ時代劇の中の江戸時代を現実の過去と錯覚している人は、
確実に存在している。
そんなに遠い時代の話ばかりではない。
たとえば昭和30年代を舞台にした映画「ALWAYS 三丁目の夕日」
の感想をネットで読むと、あの描写を映画的なウソだと割り切って
見ている人も多い反面、本気で信じこんで「古き良き時代」とか
「こんな時代って素晴らしい」とか賞賛している人がいて不安になる。
冗談じゃない。
まだ公害規制法が存在しなくて、工場が煤煙や廃液を垂れ流していた時代だよ?
今より少年犯罪が何倍も多かった時代だよ?
夏にはクーラーなんかなくて、窓を開けておくから家の中でも蚊に刺されまくってたんだよ?
便所はみんな汲み取り式だったんだよ?
全自動洗濯機も電子レンジもコンビニもATMもビデオもインターネットもテレビゲームも無かったんだよ?
あなた、本当にそんな時代に戻りたいと思います?
僕は嫌だぞ。
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