米以外でも年輩の方などは「物を大切にしなさい」と言う。
しかし「目が潰れる」のは米を粗末にした時に限ってのことであって、
麦や粟やヒエや大根を粗末にしても別に大丈夫なのである。
単に経済的価値だけなら、麦十粒を粗末にした時には目が潰れるとか、
米半粒なら大丈夫とかいっても良さそうなものであるが…
日本人にとって、米は単なる食べ物ではない。
神聖であって、粗末にした日には目までつぶすほどの霊力を持つ物であり、
それ故に貨幣として全ての価値基準にさえなったのである。
天照大御神が天孫ニニギノミコトを豊葦原瑞穂国に降臨せしめた時、
稲穂を渡し「これを日本人の主食としなさい」と言ったという神話がある。
「日本人」(弥生人から現代人)の歴史は「米を主食にしたいと願い続けた歴史」
であったともいえるのである。
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「ある意味で、日本は『米食民族』と言うよりは『米食願望民族』
と言った方が正しく、実際に米が社会の隅々にまで行き渡り、
日本人の全てが米だけの飯を食べられるようになるのは、実に
1960年代以降のことである」
― 国士舘大学教授・原田信男博士(日本の食文化研究の大家)著『江戸の食生活』(岩波現代文庫)より
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