●「ハチ公は本当に忠犬だったのか?」 農学国際専攻 教授 溝口 勝
1. ハチ公像との出会い
東京・渋谷駅前の忠犬ハチ公像は待ち合わせ場所として有名である。
私が東大に入学した45年前、飼い主が死んだ後 10年間ここで待ち続けた
という話を聞いて「そんな犬がいるのかな」といぶかしく思った。
2. 農業工学と上野先生 ― 竹中教授の証言
農学部農業工学科3年生の時、ハチ公の飼い主が日本の農業工学(農業土木学)
の創始者・東大農学部の上野英三郎教授であることを知った。
上野教授から数えて5代目の竹中肇教授は農地工学の講義で
「君たち、ハチ公は忠犬だと思っているでしょ?
実はね、上野先生は子犬のハチを連れて農林省役人の教え子たちと
よく渋谷駅前の焼き鳥屋で農地整備に関する議論をしていたらしい。
あまりにも熱中してハチを忘れていると腹をすかしたハチがクンクン
鳴くので不憫に思った焼き鳥屋のおやじが残飯をあげていたようだよ。
私も学生の時に先生から聞いた話ですがね」
と笑った。
私はこの話を聞いてハチ公も普通の犬なんだと思えて、逆に愛着がわいた。
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