味わいある言葉


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001 2024/12/05(木) 18:37:41 ID:.7ObkcBsvU
私たちが運動から帰ってみると、看守二人を従えた金〇少佐がむずかしい顔をして、部屋の真中に立っていた。食卓代りに使っている机の上には、もう碁石大に近づいた団子が山と積まれているのである。瞬間私は「しまった!」と首をすくめた。裟婆での「しまった」とは訳が違い全く胸にどすんときたのである。

不安な顔をして座につくと「これは誰が作ったのですか」と、日本語の上手な金〇少佐が、底力のある声でみんなを見まわした。誰も答える者はない。おたがいに顔を見合わす勇気もない。すると向う側の元師団参謀少佐の日向〇〇さんがちらっと私の顔を見た。まことに糞真面目な顔である。だが日向さんは全く手を出していないご仁の一人である。

「誰ですか?誰かがやらないことには、こんな物が出てくるはずがないでしょう」と金〇少佐がまた言った。その通りである。しかし誰も答えない。二分、三分と沈黙が統いた。そのうちに私はふと「私がしましたと誰かが買って出たとしたら、それこそ面目まるつぶれになる」と思いついた。まさに一番積極的にやったのはこの私だったからである。 そこで思いきって「私がやりました」と手を上げた。まことにお恥ずかしい次第だが、その声はだいぶ震えていた。「何を作っていたのですか」「碁石です」私はそこで金〇少佐の顔から眼を放した。「馬鹿者ッ!」という大喝がとんでくると思ったからである。ところが「あなたは正直に言いました。それは非常に良いことです」という低い声がかえってきたのである。

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004 2024/12/05(木) 21:03:06 ID:kqkPGTKUOU
なかなかの文章力だ

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