「がんには本物のがんと“がんもどき”があり、本物のがんは抗がん剤などの治療は
有効でないので放っておくしかなく、“がんもどき”はそもそも転移しないので
放っておいても問題ない、だから、がんは放置するのが一番よい」
というのが「がんもどき理論」である。
この「がんもどき理論」は「がん放置療法」を支える典型的な万能理論であり、
実際には何の役にも立たない無用な理論である。
では、役に立たない万能理論を、なぜ多くの人が信じるに至るのだろうか。
検診でがんが見つかったとき、多くの人は体調の悪さを自覚していない。
将来深刻な事態になるかもしれないがんがあると言われても、
実感がわく人は少ないだろう。
そんなときに、現状を肯定してくれる「がん放置療法」は、
直感に合致するのである。
これは認知心理学で「現状維持バイアス」と呼ばれている。
現状を変えることと維持することと、選択肢が2つあった場合、
現状を変えることの利益が明らかに大きく見込めても、
人々は現状を維持することを選びがちになる。
わざわざ不利な選択をするので、これを認知のバイアス(偏り)という。
わざわざ不利な選択をするというと奇妙に聞こえるかもしれないが、
そうでもない。
たとえば、お祭りに行ったらくじ引きで5千円が当たったとしよう。
もらった5千円で何を買おうかとお祭りの屋台を見てまわっているうちに、
ふと気づくともらった5千円がない。落としてしまったのだ。
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