子供の頃は特別意識することもなく、
数ある日本昔話のうちの一つ程度にだけ思っていた舌切り雀が、
世界中の文学やその他文化的傾向を見聞した上でだと、
他国には全く見られないような、日本独自の特色を帯びていることがわかる。
ほぼ全世界において、女は男に支配されるか独立自尊かの二者択一な存在としてのみ
扱われて来たのに対し、この話ではお爺さん以上に強欲で意地悪なお婆さんが、
自業自得で天罰覿面になるという、女自身の独立的な心の闇に焦点が当てられている。
強欲なユダヤの金貸し婆が主人公に殺されるドストエフスキーの「罪と罰」といえども、
婆本人の意地悪さなどの描写などはほとんどない上に、主人公も罰を受ける。
ボニー&クライドなども男女カップルでの強殺の積み重ねで、やはり最大級の
悪徳を女側に認めようとするような傾向は世界中どこにも見られない。
ただ、日本の能の老女物や鬼女物などでは、同級以上な女自身の悪徳が描かれていて、
舌切り雀もそこに大きな影響を受けているようにも思われる。女への情欲に囚われることなく、
ちゃんと女という生き物の問題点を克明に描き出し、独立した生き物としての悪徳を
断罪しておくというのは、仏教的な精進もあった上で成り立ったものであろうかな。
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