人間の能力にも色々あるが、中でも、
他者の素質を厳正に見計らい適材適所へと公正に登用する
人事の能力というのは、実際の所、神にも等しい能力の内に入るものである。
ほとんどの人間にはそんな能力はないし、あった所で絶対的とまではいかない。
だからこそ歴史上最高の叡智に数えられる諸葛孔明といえども、
弁舌の才に長けていた寵臣の馬謖を実戦登用しては大敗を喫させて、
やむなく引責死させるような過ちをも犯したのである。
人間という生き物は、無能な愚か者ほど自らを虚飾で塗り固めてまで気に入られたがるものだし、
また能力があった所で、不誠実さのためにそれを善用せず、専ら私欲のために
用いてこの世のお荷物と化するような事にもなりかねないものである。
そのような騙し、怠慢といった障壁を越えて、有能さと誠実さを兼ね備えた才人を
登用する機会に恵まれた所でまだ、こちらの領分を侵すほどの活躍への
嫉妬からの追い落としの誘惑に駆られかねないような危険性がある。
それほどにも、適切な人事の履行には多難が伴うというのに、
何の根拠もなく自らの人を見る目だけは全く疑おうともしない者の、なんと多いこと。
本当なら、諸葛孔明をも上回る眼力で、本物の今孔明と偽孔明を厳格に見分けられる
能力の持ち主だけが選挙などにも行くべきなのだが、それでは誰も行けなくなる
ものだから、誰しもが何となく、自分には人を見る目があるように思い込んでいる。
これこそが、民主主義を頓挫させた大元凶たる集団妄想なのでもある。
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