一番の問題点は、上に書いたような変遷が今まで誰にも自覚されることなく、
なし崩し的に来たされたものであるために、元来は実用品である枇杷木刀が今や
10万円を超えるような高級品扱いとなって、剣道家などの間でも珍重されていることだ。
敗戦後、日本ではGHQによって一定期間剣道の稽古が禁止された上に、
解禁後にも柔術併用の全面禁止などの大きな改変が加えられたのだった。
その過程で、一旦は古来の剣道のあり方も忘れ去られ、枇杷木刀がなぜ
愛好されていたのかなども、もはや誰も覚えてはいない状態に至ったのだろう。
それほどにもノータリンな連中による変容を来たした後の剣道モドキなんかを
やってしまったせいで、俺も20年間右肩を脱臼しっぱなしとかいう未曽有の重傷を
負ったのだし、別に俺自身の身体の弱さがその原因だったなどとも言えないわけだ。
幼木から切り出した枇杷木刀なんて、木目もただ細いだけで椿の木などと変わらない上、
(そのため椿木刀が枇杷木刀の代用品にされることもあるという)木目の通りを厳選する
ことができないせいでの経年による変形も来たしやすいらしいのに、そんなものを
重宝がって高額で買うほど、識見に欠けている連中がやっているような剣道。
いかに俺自身、遠回りな人生を歩まされて来たものかと改めて落胆させられるものだな。
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