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>>50の続き)
相手との命のやり取りとなるような実戦に際して、
「死への覚悟」こそが勝利の秘訣になることもあれば、
逆に犬死にを助長する原因になってしまうこともある。
相手に勝つための戦術戦略をよく練った上での戦いに及ぶ場合は、
それらを滞りなく実行に移して行く上での平常心を保つために、
「どうせ最悪でも死ぬだけだから」といった覚悟を抱くのが勝ち筋となる。
一方、ろくに術略も練らずに闇雲な突撃などを試みるに際しては、
捨て身の覚悟も「ええいままよ!」と自暴自棄を開き直る悪材料とのみなる。
前者はより心の安定を高める一方、後者は狂乱をこじらせるのみだから、
死への覚悟がどちらに与するかで、術略の十分さの如何もまた自明に知れる。
近代以降の戦争においても、個々の兵士や小隊などが
独自の修練によって、前者のような境地に至っていた場合もあろうし、
逆に戦国時代の日本あたりでも、下っ端の足軽などが闇雲な突撃を試みていた
ような場合があろうが、全体として死への覚悟と共なる平静が重んじられているか、
狂乱開き直りでヨシとされているかといった点が、昔の戦イクサと近代戦争の相違たる。
末端の小兵が闇雲であろうとも、将帥が確かな術略の下に手堅い戦闘を
心掛けていたなら、大多数の生存と共なる勝利に与れるし、その逆もまた然り。
昔は下手の内として忌み蔑まれていたような、上位の将校に至るまでの闇雲さが
平気で認められ始めたのが、近代戦争にこそ特有の、きわめて劣悪な点である。
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