
江戸時代後期、博多・聖福寺に仙厓和尚という高僧がおられました。
亡くなる間際に檀信徒や弟子たちから、辞世の言葉を求められたのでした。
すると仙和尚は「死にとうない」という一言を放ったのです。
名僧の最期の言葉がこれでは困ると思い、弟子たちがもう一度うながすと、
やはり「死にとうない」という言葉が返ってきます。
あわてた弟子たちが、「いえ、ご冗談ではなく、どうか本当のお言葉を......」と、
さらにしつこく念を押すと、仙和尚は、繰り返し「ほんまに、ほんまに死にとうない」
と言ったという逸話が残されております。
これを、この世に未練をもつあまり、死にたくないという気持ちにこだわりをもった、
名僧らしからぬ言葉だと、短絡的に解釈してはいけないと思います。
確かに、死が怖いあるいは死にたくない、というのが人間の本音です。
しかし人間は、この世に生まれてきた以上、必ず死ななければなりません。
だから、死にたくないけれども、そのことにこだわらず、現世を懸命に生き抜いて、
死んでいく。
そして、いざ死を迎えるその時には、死に方にもこだわらない。
苦しい時は、苦しんで死ねばいい。
立派な死に方をしようと、格好をつける必要はないのです。
死に方よりも、むしろ死を迎えるまでの生き方が問題なのです。
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