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そのタモリも古武術を長年の趣味として来たらしいが、
近年、日本の古武術の中では最大の大家だった故・黒田鉄山氏が、
本物の剣客だった祖父からの教えとして頻繁に口にしていたのが、
「古武術の稽古は楽しいのではいけない」というもの。
ちょっと興ざめすら誘いかねないような言い方ではあるが、
要は「面白味を第一とするような不真面目さであってはいけない」
ということで、そんなことでは剣道や柔道はおろか、現代武道の中では
比較的技巧を重んじている合気道などよりも、さらに複雑怪奇な
技巧を凝らす古武術の会得などはまかりならぬ、というわけである。
とはいえ、映像に残る稽古風景なども、わりと笑顔交じりで
和気藹々としたものが多いし、試合や昇段試験に向けての剣道や柔道の
稽古あたりのほうがよほど真剣そうに思えたりもしなくもないだろうが。
近代以降はずっと社会的な冷遇下に置かれて来たのが古流でもあるので、
そういう遊びを利かせるのでもなければ、黒田氏なみの高名さでも、
プロとしての道場経営を保っていくことができなかったのである。
仕事が求道ほどに真面目であることを許されないのに、いわんや趣味をや、と。
趣味ほど真面目にやるなんてのも変人扱いが免れ得ないことだし、
やはり社会的に「求道」というものが総出で尊重されて行くのでなければ、
まるで氷が常温では溶けるが如く、求道の社会的通用性も立ち消えになるのである。
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